FANTOM3新聞

毎日 3時ちょうどに出てますね。
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20050902k0000m040163000c.htm
一部抜粋。

 理研ゲノム科学総合研究センターの林崎良英主任研究員らは、マウスのゲノムを詳しく分析し、計4万4147種類のRNAが作られていることを発見。このうちの53%に相当する2万3218種類は、たんぱく質合成に関与せず、遺伝子をいつ、どこで発現させるかを指令するなどの重要な役割を担っていた。ゲノムの少なくとも約7割が、RNAに転写されていることも突き止めた。

読売
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20050902i201.html
一部抜粋。

従来、生命活動に役立つ部分はゲノムの2%程度とされていたが、大幅に増え、約70%で機能を持つ可能性があるという。

FANTOM3

私も関係者なのですが、少し解説しておきます。ここでいう2%というのは、ゲノムから転写されたRNAスプライスを受け、残ったエクソン部分を指しているのだと思います。これに対して、約70%というのはスプライスを受ける前のRNAの領域も含んでいるのだと思います。つまりhnRNAと呼ばれるイントロンも含んだRNAが含まれているということです。スプライスを受けたmRNAに対してイントロンを含むhnRNAがその数十倍のゲノム領域をカバーしていることは特に目新しいことはありません。「2%が大幅に増え70%になった」という表現は誤解を招くかもしれません。毎日新聞の「ゲノムの少なくとも約7割が、RNAに転写されていることも突き止めた。」という表現は正しいと思います。

また、70%のうち少なくとも一部が重要な機能を持っていることは示されていると思いますが、大部分については現状では証明されていないと思います。「約70%で機能を持つ可能性がある」というのは間違いではありませんが、誤解する人もいるかもしれません(これについては後述)。

毎日新聞の方にある「4万4147種類」、「2万3218種類」という数字ですが、同じRNAを複数回カウントしている可能性があります。転写されたRNAが長過ぎて全長をクローニングするのが難しい場合があるためです。長いRNAの違う場所を何度もカウントしている可能性があると思います。それから「2万3218種類」というのは、上記のhnRNAの一部もカウントしている場合があると思います(この辺の話は深入りするとレビューがひとつ書けてしまうくらいです)。また先ほども指摘しましたが、「たんぱく質合成に関与せず、遺伝子をいつ、どこで発現させるかを指令するなどの重要な役割を担っていた」ことを「2万3218種類」すべてについて証明したという話は私は知りません(これについては後述)。

以前に考えられていなかった機能をもつ未知のRNAが見つかっていることは事実です。今後、さらにRNAの新たな機能が見つかることでしょう。

FANTOM3 理研プレス発表

http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2005/050902/index.html
これを見ると、センス、アンチセンスペアが3万種類あり、「アンチセンスRNAにより、センスRNAの発現がコントロールされている」ことから「アンチセンス転写は哺乳動物の転写制御に大きな役割を担っており、それらのメカニズムにncRNAが一役かっている事実は、非常に面白い結果」といっているわけですね。